こんにちは。大人のおしゃれ塾、田中です。
シルエットはファッションの印象を左右する大事な要素です。
オーバーサイズのトレンドが続いて久しいですが、今日は洋裁レッスンの受講生Tさんのコートの話から、オーバーサイズのトレンドについて考えてみたいと思います。
ベーシックなシルエット
Tさんには、せっかく作るのですから、何年も愛着を持って着ていただくためにもベーシックなデザインをさがしました。
そんな時は初心者でも作りやすい茅木真知子さんの『ドレスアップ・ドレスダウン』!
28ページの「さっとはおっておしゃれにみえる。1枚は欲しいコート」に決めました。
タイトでもないし、ビッグでもないし、ほどほどのゆとり感を持ったシルエットだからです。
本では、ポケットが貼り付け仕様でしたが、グレードを上げて両玉縁ポケットにしました。
ボタンも小さいものが5個となっていましたが、手持ちのボタン(水牛)を使いたかったので、バランスを考えて高めの位置に3個としました。
こういう工夫ができるのもハンドメイドならではですね。
写真では両玉縁ポケットが見えにくくなていますが、コートに初挑戦で玉縁ポケットは素晴らしいです。
ボタンホールも玉縁仕上げにしました。
後ろベルトも良いアクセントになっています。身長に対してバランスの良い位置を見定めました。
総裏なので倍とまではいきませんが手間がかかりました。
コートのシルエットが分かりやすくなるようTさんにぐるっとターンしてもらいましたが、そのせいで左足の向きが妙なことになってしまいました(笑)
ご覧のように、シルエットはほぼストレートなラインで、身幅もナチュラルです。
今のトレンドは、肩もドロップしているし、身幅も広いオーバーサイズのものが多いので、クラシックに見えるかもしれませんね。
オーバーサイズな今のトレンド
このような傾向は、私の記憶では2015年あたりから始まっているように思います。
2015年にクリストフ・ルメールが、ユニクロとコラボして「ユニクロ・ルメール」シリーズを出しました。
元エルメスのデザイナーという触れ込みで大変注目されましたし、私もジルサンダー「+J」の時と同じくらい、たくさん購入しました。
その時感じたのが「サイズが大きい」ということでした。
スカートやパンツのウエストはジャストなのですが、肩幅、身幅が2014年までのシェイプされたデザインとは明らかに違う印象です。特にジャケットやシャツなど布帛(布地)製品にそれを感じました。
この傾向は2016年からの「ユニクロU」でさらに際立ってきました。
ワンサイズ下げてコートを購入したのを覚えています。今ならワンサイス上げて着用することもあります。
「流行」は少数の人、おしゃれに敏感な若い人たちから始まります。
それがだんだん一般の人(若者)に広まり、最終的に中高年に影響が表れ始めます。そのころには新たなトレンドが芽生え流行し始めています。
流行のサイクルは7~20年説などいろいろありますが、おおよそ10年とみれば2024~25年あたりまでは、今のオーバーサイズのトレンドが続くのではないでしょうか。
ひょっとしたら、スキニーデニムが生き残ったように、オーバーサイズも定番化するかもしれません。
2020~21年あたりから、ぴったりしたショート丈のトップスや、短い丈のパンツなどがプラダなどのコレクションで見られるようになりましたが、2022年春夏では、GUやユニクロなどでも短い丈のブルゾンやTシャツが店頭に並ぶようになりました。
H&MやZARAでも、おへそが出るような短い丈のトップスが目白押しです。その上にゆったりしたブルゾンやジャケット、シャツを羽織ったり羽織らなかったり。
これからはオーバーサイズなものとミニマムなものの共存が始まるのかもしれません。
オーバーサイズ過ぎるものへの飽きも出始めるかもしれませんし、一方では、Celine(セリーヌ)の超ワイドなデニム(ジーンズ)のように極端なかたちでオーバーサイズも生き残るのかもしれません。
Tさんのコートは、細からず太からず、今流行のシルエットではありませんが、これといった特徴のないデザインだからこそ、愛着を持って長く着ていただけるのではないかと思います。