こんにちは。大人のおしゃれ塾、田中です。
応援しているようで実は何もできていない傍観者な私。
百貨店で服を買わなくなったし、「きもの」もここ30年あつらえていません。
買うのはもっぱらファストファッションばかり。
せめてファッション雑誌は読み続けようと思っても、書店で手にした冊子の薄さに悲しくなってしまう。
「続けてほしい」「頑張ってほしい」と願うのは簡単なこと。問題は買うかどうかです。
いくら薄くなっても中身が濃ければいいのですが、残念ながら中身と厚みは比例しているような。
ファッション雑誌『ジゼル』の総ページ数の変化
ファッション雑誌『ジゼル』は、そんな雑誌不況の中、センスと熱意が光っているように感じられて去年の12月号を購入しました。
この2022年12月号「ニットの配役」はページ総数190ページ。なかなか見ごたえ読みごたえがあり、買ってよかったと思いました。
年間購読を考えましたが、とりあえず次号を見てから判断しようと様子を見ることに。
結果はこちら↓。1・2月合併号は期待外れで年間購読は(この時は)見送りました。
ところが、2023年3月号「いろを着がえる」を見てみると、内容が濃く、この号から年間購読を申し込むことに。ちなみに総ページ数は190ページ。12月号と同じボリュームです。
以後、順次、4月号、5月号と自宅に届きましたが、、、
総ページ数がかなり減っています・・・
2023年4月号「きっかけをくれる服」158ページ。
2023年5月号「条件つきのベーシック」172ページ。
さらに6月号は7月号との合併号(2023年6・7月合併号「選ばれた中から選ぶ」)は・・・
総ページ数154ページ。
合併号にもかかわらず激減していました。
しかも次の号も8月と9月の合併号との予告・・・
うーん、なんだかこの先ずっと合併号になるのかもしれません。
そのうち季刊になって、その先は・・・
こんな先細りの状況は雑誌社ばかりが招いたものではなく、アパレル業界の衰退も大きく関与しています。
今はYouTubeでも視聴数が伸びるのはファストファッションを扱ったもの。
視聴者に身近な商品だからこそですね。
今を感じさせるデザインが、そこそこの価格で手に入るのですから、ファストファッション恐るべしです。
こうなってくると、雑誌という紙媒体で、しかも地方では入手困難な中~高価格帯の商品が載る「ファッション雑誌」は、ますます生き残りが難しくなるのではないでしょうか。
ファッションへの情熱が伝わってきた小井手学園の作品展示
生き残りが難しかったのはファッション専門学校も同様です。
戦後、雨後の筍のごとく設立された洋裁学校も、1980年代~90年代はファッション専門学校と名を変え、DCブランドの隆盛とともに多くの学生がここで学びました。
2010年頃からは全国的に、ファッション単独での生き残りが難しくなり、美容やブライダルを巻き込んだコースへの改編が行われましたが、その努力も空しく「服作り」の伝統を守ろうとした学校ほど生き残りは難しく、廃校に追い込まれていきました。
今では広島市内で「服作り」が学べるのは、小井手ファッションビューティー専門学校だけとなりました。
私はこちらの学校にはご縁があって、1983年~1996年の14年間、非常勤講師として教鞭をとらせていただきました。
担当していたのは、色彩学、服装史、スタイル画、アパレル商品企画の4科目でしたが、なかでもスタイル画は、コンテストに応募するクラスを作り、全国規模のコンテストで入賞者を出したりしていました。
あの頃の学生のファッションへの情熱は今思い出しても胸が熱くなります。(小井手学園をやめたのは広島文化短大に就職が決まったからです)
そんな私だったのですが、一昨日、たまたま通りかかったイオンモール広島府中店で、偶然、小井手学園の作品展示を目にしました!
小井手ファッションビューティー専門学校生によるリメイク衣装展示
リメイク作品の展示でしたが、その意匠(デザイン)と縫製への思い入れが伝わってきて感動しました。
まず、青と赤がまず目に飛び込んでくるこちらのワンピース。身生地がパッチワークでできています。
よく見ると青と赤以外にも、黒と白地に黒いストライプの入ったパーツが、バランスよく配置されています。
黒いパーツはウエストのコルセットともリンクしていて、スタイリングもセンスが良いですね~。
膝のラインで切り替えギャザーを入れることによって裾に向かってボリュームを出し、襟は端正なプリーツ、袖山は思いっきり立ち上げ袖口のカフスは長く。モダンでありながらクラシックな雰囲気が見事に表現できています。
次の2点は元の素材(スーツやベルト)をうまく活かした作品です。
色のトーンが揃っているので、かなりアバンギャルドな作品ですが下品にならず、着用時のバランスも十分、吟味されているように思いました。
左のモスグリーンはパンツの裾にちょっとしたブルー、ベルトの方は、胸下のくすんだ赤いベルトがアクセントとなっています。
次のブルーデニム作品も、もとのオーバーオールやシャツを活かしたデザインとなっていて、前に垂らした部分が戦国武将の甲冑のようにも見えて面白いですね。
ロープでウエストをマークしたのも良かった!上下の縦方向のコントラストが強調されています。
リメイクには元の服の形を活かすやり方と、生地として使うやり方があります。両方を同時に使うこともあります。
次の4作品をご覧いただけば、そのことがお分かりいただけるのではないでしょうか。
これらの作品は、ファッションショーではさらに趣向を凝らしたヘアメイクやアクセサリー、シューズが加わりますから、それはそれは見応えがあると思います。
ファッションショーというのは表現(クリエイション)の可能性に挑む場ですから、「これ、どこで着るじゃ」とか「うちのお母ちゃんには着せとうない」とかの感想を言われると困るのですね(笑)
あなたのお母ちゃん(奥さん)に着せようと思って作っているのではありませんから。
プレタポルテ(既製服)ならプレタポルテなりに作りますから。
おわりに
今日はファッション雑誌のことと専門学校生の作品について書きましたが、両者には共通する思いがあります。
小井手学園については、今は亡き、小井手伊勢子先生、小井手桂子先生の並々ならぬ情熱、意志を受け継ぎ、これからもファッションの根を絶やさず頑張っていただきたいと思いました。
ファッション雑誌『ジゼル』の方も、合併号続きになっても読ませていただきますので、これからもファッションに寄せる「心意気」を巧みな誌面作り(特に文章!)で発揮してくださいね。
追記:『ジゼル』の7/8月号、発売と同時に購入しましたが、表紙もモデルも一新されてなかなかの仕上がりでした!