大人のおしゃれ塾、田中です。
今日は秋晴れの気持ちの良い一日でした。
青空を背景に、木々の紅葉が美しいです。
「日本の印象派」と称された南薫造も、きっと、光を受けて輝く樹木のそよぎに心を動かされたことでしょう。
広島県立美術館『秋の所蔵作品展』では、その南薫造(1883・明治16–1950・昭和25)の作品をたくさん観ることができました。
ほぼ全作品、撮影が許可されているので(ただしフラッシュは禁止)、何枚か撮らせていただきましたが、まったく色が再現できてません(涙)
《座せる女》1908年 油彩・画布
《座せる女》は留学の成果として第4回文展に出品され三等を受賞したそうです。
南薫造は東京美術学校を卒業した1907(明治40)年に、イギリスに留学しました。船の旅は当時2か月もかかったそうです。
留学期間の後半にはパリに拠点を移し、ヨーロッパ各地を巡ったそうです。
この作品には印象派からの影響は見られませんが、女性の肌の白さや透明感、花器(磁器)の質感(光沢)など、小さな部分の表現に新鮮な驚きを感じさせてくれます。
何より全体にそこはかとない気品が漂っています。
ところで、南薫造の呉市安浦町の実家は、お父さんがお医者さんだったそうです。
こういう場合、よくあるパターンとしては息子にも「医者になれ」と言いそうですが、美大への進学はもちろん、ヨーロッパへの遊学も支援しているわけですからすごいですよね。
広島県立美術館発行の<ミニガイド>によりますと、お父さんも絵に関心がある方だったようです。さらに西洋文化に通じたご親戚も身近にいらしたそうです。
なるほど!それにしても当時としては財力もですが、価値観の柔軟性も見事としか言いようがありません。
興味があるので、今度、呉市安浦町にある安浦歴史民俗資料館(南薫造記念館)に行ってみます。
(近くにあるグリーンピアせとうちには毎年、学生を連れて宿泊研修に行っていたため、その時からずっと気になっていました)
次の絵は《ピアノ》1921年 油彩・画布です。
大正10年に自宅にピアノです。(そんなところに感心する俗な私!)
窓辺の妹に当たる陽光、ピアノを弾く姉の背中に当たる光が美しいです。
次は《曝書(ばくしょ)》1946年 油彩・画布です。
私の大好きな作品で、本の虫干しをしている情景を描いています。
前述の<ミニガイド>から作品解説を引用させていただきます。
少し長いですが、お読みいただければ嬉しいです。私が書いた文章ではないですが笑。
画家の自宅で、書物を虫干しする夏の一日を描いています。開け放った開放的な室内で、思い思いに書物を眺めるのは画家の孫。明るい外光に誘われるように庭に目を移せば、木々には緑が豊かに茂り、夏の空気を感じさせます。穏やかな時の流れを伝える画面からは、かけがえのない日常を慈しむ作者の温かい眼差しが感じられるようです。
作品もですが、解説文も素晴らしいですね!
蔵書の虫干しなど、私は見たことも、したこともありませんが、こういった縁側のある建築は高度成長期前の日本ではよく見られました。
庭の緑が光を受けて輝いています。セミの声も止まった昼下がりといった印象でしょうか。
この作品展は12月24日(木)まで開催されています。
南薫造の温かな光と眼差しに出会えると思います。