ダイソーの可愛い景品「ピーターラビットの日本オリジナルデザイン」と商標権の問題

ファッション

こんにちは。大人のおしゃれ塾、田中です。

今年の3月14日から始まったダイソーの2022年春夏シールキャンペーン、今回はピーターラビットの日本オリジナルデザイン、KAWAIIシリーズでした。

店頭に並んだ4匹のぬいぐるみを見た時、思わず「可愛い~」と心の中で叫んでしまいました。

本家のピーターラビットは正直、可愛いと思ったことはないのですが、この目がぱっちりとした愛くるしい眼差しはいったい何なのでしょう(笑)

こんなにオリジナルに変更を加えてよいのでしょうか?

シールは税込み300円ごとに1枚もらえます。24枚揃ったらぬいぐるみが1体495円で買える仕組みになっています。

今日は、私がシール集めのために、何を買ったか、そしてピーターラビットの著作権はどうなっているのか、についてまとめてみたいと思います。

私がダイソーで買ったもの

もともとダイソーでは、掃除用のシートやごみ袋など、これまでにも何点か気に入った商品があって定期的にそれらを購入していました。

それでもシール24枚集めようと思うと300円×24=7200円!

服なら7200円くらいすぐに使えますが、ダイソーの商品は単価が108円~110円。165円~550円の商品もありますが、結構7200円も買うとなると大変です。

ここは落ち着いて、まずは私が毎日食べているものを中心に考えてみましょう。

  • カリフォルニアレーズン(干し葡萄)
  • カシューナッツ

レーズンは毎日ヨーグルトに入れたり、パンを焼く時に使っています。カシューナッツは亜鉛補給のために購入しています。

7200円のうち半分以上はこれらの食品を1週間おきくらいに購入しました。

あとは家で保管していても大丈夫なコーヒーフィルターやキッチンペーパー、掃除用シート、ゴミ袋(各種)、電池などを、300円の倍数になるよう購入しました。

今回、金額合わせのため購入したのが「馬油ハンドクリーム」です。

店頭には2種類あって、まずはこちらの馬がジャンプしている絵柄の方を購入してみました。

結果、使用感はとても良いのですが、香料が私には強過ぎて、使ったあと数分間は我慢が必要でした。

けれどもう一つの方は、@コスメなどの口コミを見ると、穏やかなラベンダーの香りのようです。

こちらは紙のパッケージが付いていて、絵の馬がおとなしいです(笑)

香りも穏やかで使用感もサラッとしていて大変気に入りました。

モデルチェンジの時期なのでしょうか、二つの成分はかなり違います。

あともう1点お勧めなのは大容量タイプのコットン(150枚入)です。

コットンの中には3層になっているものや、周囲がシールされている(閉じられている)ものがありますが、このシンプルなタイプが一番、使いやすいです。

そんなこんなで何度か買い物を繰り返し、シール24枚を達成しました。

そしてもらった(というか495円で購入した)のが、ベンジャミン・バニーです。

ベンジャミン・バニーはピーターのいとこで、ピーターの冒険仲間だそうです。

ひとめ見た時からベンジャミン・バニー一択でした(笑)

完成度の高いぬいぐるみ

店頭で実物を見たことがないと「手の平サイズ」のように思われるかもしれませんが、実際は耳の先まで30㎝あります。

腹囲も30㎝あってふっくらしています。とても肌触りがなめらかなファー素材でできていて、詰め物も硬すぎず柔らかすぎず、自立もするし抱っこしても気持ちが良いです。

目の周りは白いファーで切り替えられていて、鼻筋も別パートとして縫い合わせてあります。目と口は刺繡で表現されていました。

上着のポケットも写真では大きく見えますが、実際は2㎝あるかないかの小ささです。細かいパーツなのにきちんと縫製されていました。

生産国はインドネシア(MADE IN INDNESIA)となっています。

生産会社は、タグの裏面を見るとブランド・ロイヤルティ・ジャパン株式会社となっていました。

「どんな会社なのだろう?」とググってみると、どうやら広告やポイントシールでの販売コンサルティングを行う会社のようです。

ピーターラビットやテディベアのぬいぐるみ、食器などを扱っていました。

この会社がピーターラビットの日本オリジナルデザインの許可を得て製品化しているものと思われます。

それではピーターラビットの著作権はどこにあるのでしょうか。

ピーターラビットの作者は、ヘレン・ビアトリクス・ポッターといいます。彼女はすでに亡くなっていて、著作権の保護期間はとっくに過ぎているようです。

だったらもう著作権は存在しないのではないでしょうか?

ピーターラビットの作者ポッターのこと

ポッターは1866年に英国の中流階級の家庭に生まれ、30代で子供向けの本「ピーターラビットの物語」出版しました。イラストも彼女によるもので、出版した本の数は30冊に及ぶそうです。

1913年には地元の弁護士であるウィリアム・ヒーリスと47歳で結婚し、1943年に77歳で肺炎と心臓病で亡くなりました。

ポッターの死後、夫のウィリアムは、彼らの財産と彼女の作品の管理をしましたが、1945年、彼の死後にはすべてをナショナルトラストに委任しました。

ナショナル・トラスト とは、歴史的建築物の保護を目的とした英国のボランティア団体で、ピーター・ラビットの舞台となった湖水地方や、ポッターが晩年を過ごした家などを管理しています。

ポッターの作品の著作権は、その後、彼女の出版社であるフレデリックウォーンアンドカンパニーFrederick Warne&Co.に譲渡されました。

英国およびその他の国では、死後70年で著作権が失効するそうなのですが、いまだにピーターラビットの著作権は生き残っています。

これは一体どういうことなのでしょう。

永遠の著作権?

弁護士の福井健策氏はコラム「擬似著作権: ピーターラビット、お前に永遠の命をあげよう」で次のように述べています。

世の中には、理論的には著作権はないのだけれど、事実上著作権に近いような扱いを受けている(あるいは受けかねない)ケースがある。(中略)「擬似著作権」と、ここでは名づけよう。

ポッターの場合も、いわゆる「戦時加算」を計算に入れても日本ではとっくに保護期間は切れています。

「戦時加算」というのは、アメリカやイギリスなど旧連合国の戦前・戦中の著作物について、日本での保護期間を最大で10年5ヶ月延長するという取り決めです。

著作権が切れた状態(パブリック・ドメイン=PD)であれば、誰がその絵本を出版しようが、絵柄を使おうと基本的には自由です。

それでも日本ではピーターラビットの絵本やグッズには、小さい文字の「™」や「©」などの表示がついていて、第三者が自由に原作を使うことに対して制限をかけています。

TMとはトレードマークの略で「商標」であることを示しています。

このような「商標」はピーターラビットに限らず、ミッキーマウスでもムーミンでも、キャラクターものには必ず付随していて「®」は登録商標を指すそうです。

少なくとも日本ではピーターラビットの著作権は切れていても「商標権」を掲げることによって「著作権が生きているような」状況になっているということです。

一見「知財権のような」もっともらしい権利主張に出くわすと、特にその者が欧米の権利者で複雑そうな警告表示をしていたり、強い後ろ盾があったりすると、とりあえず権利があるかのように許可を申請し、高額な使用料すら払う。

このような仕組みのもと、ブランド・ロイヤルティ・ジャパン株式会社は、商標権をもつフレデリックウォーンアンドカンパニーFrederick Warne&Co.に使用料を払い、ピーターラビットの日本オリジナルデザインKAWAIIの許諾を得たのだと思います。

国内3,620店舗、海外24か国2,272店舗(2021年2月)を有するダイソーですから、法律上のトラブルには十分配慮していることでしょう。

おわりに

もし、今回私が手にしたベンジャミン・バニーが何の表示もないぬいぐるみだったとしたら、私の受け止め方はどうだったでしょうか。

「可愛いな」とは思ったかもしれませんが、そこで終わっていたような気がします。

ピーターラビットという背景があるからこそ価値が高まったように思うのです。

かくて、時として100年も前の作品が「永遠の著作権」を得て、どこかにいる権利者のために日本で高額なライセンス収入を稼ぐ事態が生れる。

「ブランド」とは商標です。

「ブランド」をめぐってビジネスが生まれます。

ライセンス料がどれほどの金額なのか想像もつきませんが、ベンジャミン・バニーは今も私の側でこちらを見ています。